市民タイムス記事


市民タイムス安曇野版 平成22年5月11日に掲載された記事です
  

「天敵」犬で猿退治へ

松本でもモンキードッグ

 

農作物を食べ荒らす猿を山に追い返す犬「モンキードッグ」が、松本市で初めて誕生した。松本市波田地区鳥獣被害防止対策協議会が、波田地区赤松で飼われているシバイヌ1匹を訓練した。住民は「『犬猿の仲』の性格を生かし、安心して畑仕事をできる環境を取り戻して」と、活躍に期待している。  (渕上健太)

 
 

 波田地区赤松の団体職員・深沢了子さん(61)が飼う1歳6ヶ月の雄の「玄豊(げんほう)」で、昨年10月から6ヶ月間、安曇野市の民間施設で訓練を受けた。猿を山に追い込んだり、追い返した後に飼い主まで戻ったりするなどの行動を身に付け、4月上旬に活動を始めた。県によると、中信地方では大町市や南木曽町、安曇野市、池田町などで86匹が活動しているが、松本市では初となる。協議会が国の補助金を活用して月5万円の訓練費用を負担した。

 深沢さんが毎朝、地元の山際の畑まで散歩に連れ出し、猿を見つけると放して山に追い返せさせている。午後は深沢さんの親せきで、隣に住む中村彰さん(74)が猿の見回りを兼ねて散歩に連れ出すほか、中村さんが住民から猿出没の連絡を受けると、群れの近くまで連れていき放している。

 すでに7回ほど「出動」しており、いずれも30分ほどで山奥に追い返した。中村さんは「猿を見ると興奮して急斜面でも一目散に追い掛ける。猿は怖がって木を伝って逃げ出す」と効果を話す。玄豊が散歩中に付けた尿のにおいも猿は嫌がり、畑に近づきにくくなるという。

 市内では梓川地区や安曇野地区などでも猿による農業被害が問題となっている。市農政課は「猿の侵入を防ぐ電気柵設置などの対策を講じているが、モンキードッグも新しい対策として注目したい」と期待している。

 ただ、撃退させるには半年程度、訓練を受けさせる必要があるほか、猿の出没を確認したり、素早く放したりする管理体制が欠かせない。同課は「普及には住民の協力体制をどうつくるかが課題となる」と話している。